トラブルシューティング・メンテナンス
以下の情報は、電気ヒートトレースシステムのトラブルシューティングで役立てるためのものです。 その主な目的は、ヒートトレース施工を成功させるための要素をより理解していただくことです。 これらの要素の中でも重要なのが熱絶縁です。
ヒートトレースのベンダーに連絡する前に、施工の目視検査を行いましょう。熱絶縁材が濡れていたり、損傷または欠損している場合があります。 また、インライン装置や周辺装置の修理・保守作業により、ヒートトレース装置に損傷が起きたかもしれない可能性についても検討してください。 これらは、トレースの問題で見落としがちなよくある原因です。 その他の考えられる原因については、それぞれの症状と対策とともに以下に記載しましたのでご覧ください。
電気ヒートトレース回路が損傷していると思われる場合は、ポリマー絶縁ヒーターケーブルには2500 Vdc、MIケーブルには1000 Vdcのメガーで絶縁被覆抵抗(メガー)テストを行ってください。 定期的なテストを正確に記録しながら行うことで、「正常」な動作範囲が定まります(3ページの「検査報告書フォーム」を参照してください)。 絶縁被覆抵抗の測定値がその正常範囲から外れていれば、損傷回路があることがすぐに分かります。
当てはまる症状を以下から選択してください:
症状 | 考えられる原因 | 対策 |
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I. 加熱しない / 通電しない | A. 電力(電圧)損失 | A. トレース回路に電源を再投入する(ブレーカーと電気的接続を確認すること)。 粗悪な端末部が原因で、EPD型のブレーカーが突然落ちることがあります。 |
B. コントローラーの設定値が低すぎる | B. 設定値を調整する | |
C. 高温リミットスイッチが作動している | C. ヒートトレース回路を再び有効にするため、手動リセットが必要な場合あり | |
D. 直列のヒーター回路が開いている | D. 回路を修理または交換する 1 | |
E. コントローラーの故障 | E. センサーまたはコントローラーを修理する 2 | |
II. システム温度が低い | A. コントローラーの設定値が低すぎる | A. 設定値を調整する |
B. 温度センサーの位置がヒーターケーブルやその他の熱源に近すぎる;制御リレー/接点における過剰なサイクル数を伴う場合あり | B. センサーを移動する | |
C. 保温材の素材および/または厚さが設計と異なる | C. 保温材を交換する;保温材を厚くする(乾燥状態の場合);より高いケーブル出力に対応するよう、電圧の引き上げを検討する3 | |
D. 外気温度が設計よりも低い | D. より高い出力のヒーターケーブルを施工する;保温材を厚くする;電圧を上げる 3 | |
E. 電圧が低い(電源接続点を確認すること) | E. 設計要件を満たすよう電圧を調整する 3 | |
III. 部分的に温度が低い | A. 保温材が濡れている、損傷または欠損している | A. 保温材とジャケットを修理または交換する |
B. ヒーターケーブルが並列に接続されている;発熱体が覆われていない、またはマトリクスが損傷している | B. 修理または交換する;接合キットはケーブル製造業者より入手可能 | |
C. ヒートシンク(バルブ、ポンプ、配管サポートなど) | C. ヒートシンクを保温する、またはヒートシンクのトレースの量を増やす | |
D. 加熱配管の長さに沿って高度に大幅な変化がある | D. ヒーター回路を、別々の、個別に制御されるセグメントに分割することを検討する | |
IV. システム温度が高い | A. コントローラーが常に「オン」の状態である | A. 設定値を調整する、またはセンサーを交換する2 |
B. 接点閉時のコントローラーが故障している | B. センサーまたはコントローラーを交換する2 | |
C. センサーの位置が保温されていない配管上にある、またはヒートシンクに近すぎる | C. 配管全長にわたる状態を表すエリアにセンサーを移動する | |
D. ヒーター回路のバックアップコントローラーが常に「オン」の状態である | D. 設定値を調整する、またはバックアップコントローラーを交換する | |
V. 過剰なサイクル数 | A. 温度センサーの位置がヒーターケーブルやその他の熱源に近すぎる;低いシステム温度を伴う場合がある。 | A. センサーを移動する |
B. 外気温度がコントローラーの設定値に近い | B. コントローラーの設定値を一時的に変更する | |
C. 接続電圧が高すぎる | C. 電圧を下げる | |
D. ヒーターケーブルの出力が高すぎる(過剰設計) | D. より低い出力のヒーターケーブルを施工する、または電圧を下げる | |
E. コントローラーの差動範囲が狭すぎる | E. 差動範囲を広げる、またはコントローラーを交換して早期の接点故障を避ける | |
VI. 温度がパイプライン沿いの設定値と異なる | A. 流量パターンやプロセス動作温度が想定外である | A. 既存の流量パターンに適応するようヒーター回路を再配置する;プロセス状態を確認する |
B. パイプライン沿いのケーブル施工が整合性に欠ける | B. ケーブルの施工法、特にヒートシンクを確認する | |
C. ケーブルの性能が整合性に欠ける | C. 測定された配管温度でのワット毎フィート[(電圧x電流)÷長さ]を計算して、同じ温度での設計上のケーブル出力と比較する;並列ケーブルの局地的な損傷により、部分的な故障が生じる場合がある |
注:
1. 柔軟性があるプラスチック被覆ヒーターケーブルは、現場で接続することができます。MIケーブルは大抵の場合交換が必要です。
2. 機械式サーモスタットセンサーは修理・交換できません。RTDまたは熱電対センサーは交換可能です。 一部のコントローラーには交換可能な接点/リレーがあるものや、ヒーター回路でトリップ状態が検知された場合に手動リセットを必要とするものがあります。
3. ほとんどの電気ヒートトレースケーブルの動作は、供給電圧の変化に大きく影響されます。 変更を加える前に、利用可能な交流電圧の情報についてケーブル製造業者にご相談ください。 さもないと、ケーブルの故障および/または電気的な安全上の危険性によって問題が生じる場合があります。